「時間救助隊TIMER3」(能田達規 作)を読んで。

時間救助隊タイマー3 (シリウスコミックス)

時間救助隊タイマー3 (シリウスコミックス)


「お前はとことんマイナーメジャーが好きなんだなぁ」

 大学時代、漫画同好会に所属していた私は、同じサークル所属の同級生に、そんなことを言われていた。

 当時、「第2部」の余韻が残っていた「3×3EYES」が好きだったり、開始直後のこれまた余韻が残っていた「ドラゴン・フィスト」が大好きだったり、「物の怪らんちき戦争」が好きだったり。「オラトリオ・スケープ」が大好きだったり。

 当時、ジャンプではドラゴンボールシティーハンターも当然ジョジョも大人気だったはず。
 その辺も勿論それなりに好きだったのですが、読み切りで「るろうに」が掲載されたりすると、「お前の好きそうな漫画が載ってるぞ」とツッコミ入れられるような次第で。
 (ちなみに、「るろうに剣心」連載の元になった読み切りは二作とも雑誌でしっかり読んでました。しかも好きでした。「神谷恵(高荷ではない)」も「千鶴」も本当に好きでした。)

 多分、そのいわゆる「マイナーメジャー好き」というのは子供のころ好きだったアニメの影響が大きいのではないかな、と思います。
 「ドロロンえん魔くん」、「無敵超人ザンボット3」、「新造人間キャシャーン」、「妖怪人間ベム」などなど。

 この4つを並べると、はっきりとした共通点が見えてくるのですよね。
 それは、正義を成す主人公が、世間一般から見て「アウトロー」であり、怖がられたり、遠ざけられ、あげくの果てには迫害される立場にある、ということだったりします。

 当時(5、6歳?)の私は、常に、自分が他とどこか違う存在だと思い続けていた。良い悪いとか出来不出来は関係なく、ただ「違う」と感じていた。
 
 まぁ、自分以外は他人だと考えれば当たり前の話なんだけど、当時はまあ、いろいろあったので、周囲とのギャップをことさら強く感じたのも確か。
 多分そんなこともあって「正当に理解してもらえない正義の味方」という存在の力強さと哀しみとに殊更惹かれたのだと思います。

 「るろうに」の剣心も「人斬り」でアウトロー、ですよね。「るろうに剣心」になると「神谷道場」の存在が彼の拠り所となるので若干意味合いは変わって来ますが、根っこの部分は変わらない。

 「3×3EYES」、「ドラゴン・フィスト」、「物の怪らんちき戦争」、「オラトリオ・スケープ」についても考えていくと、共通点があります。
 
 「ヒロイン」が、特殊な存在であり、結果として、迫害を受ける形となるのです。

 「3×3EYES」のパイは三つ目の妖怪だし、ホウアシオはそのまま化蛇ですし。
 「ドラゴン・フィスト」の交野冬香はクローンであり、本来存在を許されない立場にあった。
 「物の怪らんちき戦争」の稚里は、天邪鬼で、村を救うが忌避される。
 「オラトリオ・スケープ」の螺旋は、ヒトですが、この世界ではヒト族はほとんど生き残っておらず、逆にその存在を利用しようとする輩に狙われることとなる。

 彼女達を見て、近しい存在だと感じたのは、僕自身が人と接することを苦手としているからなんだと思う。

 そうして見ていくと、その後、「AIR」の観鈴美凪、みちるへと辿り着くことになったのは、決して偶然ではなかったのだと言える。

 枝葉の部分を取り去ってその本質に特化していった結果として「AIR」の世界はあるのだと思う。
 
 そこには気の利いた設定や、心躍る物語は無いかもしれない。
 それどころか物語は整合性を欠き破綻すらしているかもしれない。

 だが、僕の愛した僕に近しい者たちは、確かにそこにいた。


 そして、「時間救助隊TIMER3」。
 2006年の作品ですが、この中には、私が子供の頃好きだったアニメの要素がふんだんに散りばめられていた。

 能田さんの作風はどこか軽すぎて、このままでは決してメジャーにはなり得ないのかな、という印象がある。
 だけど、その描く世界には、現実が厳然として存在している。
 
 ポニョの世界には無い部分での現実だ。

 ポニョの世界にはおそらく必要のない現実だ。

 でも僕はその「現実」が好きなんだと思う。

 「SWAN SONG」の暗い世界に納得しながら「ポニョ」の明るい世界に不快を感じてしまったのは、その点なのだと思う。

 繰り返しますが「ポニョ」はいい映画です。宮崎駿さんは天才です。
 道徳とかうんぬんを越えてそれは認めます。

 でも、僕は多分「ポニョ」の世界で生きていくのは物凄く息苦しいものだと感じる。

 ナウシカもきっと同じようなことを言うんじゃないだろうか。

 宮崎駿さんがダブルスタンダードだとは言わない。

 ただ、やるせないせつなさを感じる。

 それが辛い。そして多分それは僕自身のせいなんだと思う。