恋が、特徴的な女性キャラクターの魅力を減衰するのでは?

 海燕さんと夜中にヱヴァ破凄かったねぇ、という話をしていて、その中から発展した話。

 ヱヴァの女の子のキャラの話をしてて、やっぱり思い入れしてるところが互いに全然違うんだなぁということを確認。好みって人それぞれだよね、と。

 で、その後に発展したのがこの話題。
 おおまかには、既に海燕さんがブログでまとめてらっしゃいます。
 ↓
 http://d.hatena.ne.jp/kaien/20090701/p1


 私の側からも少しだけ補足しておこうと思います。

 ここで使っている「格」という言葉の定義について、実際スカイプでも、そこをきっちり押さえておかないと意味が通らないよね、という話をしていたので、ちょっと触れておきます。

 ここで言う「格」とは、物語の中での、(おもに)主題に関しての登場人物の言動の(読者を含む)他者に与える重みの度合い、と言い換えられるものだと私は理解しています。

 例えば、アルド・ナリスにしても、オスカー・フォン・ロイエンタールにしても、他者に対して思わせぶりな発言をしても無視されず、むしろ、強烈な印象を残しがちなんですよね。そういうキャラを便宜上「格」が高いと定義しています。

 で、それに対して、同等に強烈な印象を持った女性キャラクターって、「グイン・サーガ」にも「銀河英雄伝説」にもなかなか見つからないよね、という話をしていたんですよね。
 ナリスやロイエンタールが何かの点で自分を超えうるものを認める異性ってなかなかいないよね、と。
 で、まぁ、イリスの話が出たわけなんですけど、彼女はナリスに匹敵する「格」を持って登場するわけです。ただ、ケイロニア編の終了と同時に彼女は憑きものが落ちたように印象の薄いキャラクターになっていく印象がある。
 それは何故か、と考えてみるに、彼女には最後の最後まで、ケイロニア皇位簒奪を遂行するか、それとも全てを捨て一介の女として生きるか、という選択があったわけです。
 彼女が吟遊詩人の妻となることを選択した、その選択の重みは私に感動を与えてくれました。
 母の復讐を成し遂げるため、皇位簒奪に異常なまでの執着を見せた彼女が、それを捨てる、それは彼女の根源を覆すことであり、マリウスへの愛の重さを心底実感させてくれました。
 それは、得難い感動だったと、今でも思い出します。

 しかし、グイン・サーガはそこで終わりませんでした。
 マリウスと、オクタヴィアとなったイリスもまた再登場することになります。

 そのオクタヴィアからは、かつてのイリスの持っていた、憑かれたような、闇色をした魅力というものは、どんどんと喪われていったのです。
 
 綺麗で剣の腕が立って、いろいろと気の回る女の人。しかし、その彼女に対しては以前ほどの「格」を感じることはありませんでした。

 で、もし、イリスがケイロニア皇帝として即位するような展開になっていたらきっと面白いだろうね、という話をしたんですよね。
 
 皇帝という地位をイリスが得ることが出来ていたら、臣下であるグインとも、ほぼ対等の遣り取りが出来たのじゃないか、と夢想するわけですよ。
 マリウスをして魅了させる「格」を持った彼女だからこそ、極端な失政を行わない限り、グインも表だっての反抗は行わないだろうと思うのですよね。

 しかし、ケイロニアの闇皇帝となる可能性を持っていたたった一人のイリスは失われ、父親にかいがいしく仕え、笑顔をふりまき、愛娘にこよなき愛をそそぐ幾万もの母の一人、オクタヴィアだけが物語に遺された。

 それが私には、そして海燕さんには魅力を減じて見えたんですよ。

 オクタヴィアは、一人の女となった後も、皇女としての立場に戻されることになります。もう一人の皇女シルヴィアには問題多く、オクタヴィアには周囲の期待が注がれます。しかし、彼女には、一人の母として生きる以上の望みは何もなくなっていました。

 かつて、希有の魂を持って物語に現れながら、平凡な幸せをあえて望む決断は、素敵です。
 しかし、まさに凡百の幸せを送る彼女の描写には、さほど魅力が感じられないのですよね。
 アムネリスにしても、女として彼女が望む幸せ、というものには、さほど特徴的な魅力は感じられませんでした。
 その魅力の喪失のトリガーとなっているのが、彼女たちの恋愛観にあるのではないか、と推察した次第です。

 アムネリスにしてもオクタヴィアにしても、また、ナリス、イシュトヴァーン、グインにしても、一国の中枢を担う、または担いうる立場に立つわけなんですよね。
 でありながら、ミクロの愛を他の何よりも優先し続けるように見える、アムネリス、オクタヴィアの言葉の重みは何か薄っぺらく軽く見えてしまうのですよ。
 それは決して彼女たちが悪いわけではない、と思うのです。
 しかし、さほど興味を引かれるわけでもない、というのも実感なんですよね。
 魅力があっても他に埋没してしまう印象になってしまうというか。

 だからこそ、真賀田四季(すべてがFになる)みたいなインパクトを持った女性登場人物をもっと見たいよね、という話をしたのでした。