JUGEMより出張再開

ボクを包む月の光―ぼく地球次世代編 (1) (花とゆめCOMICS (2801))

ボクを包む月の光―ぼく地球次世代編 (1) (花とゆめCOMICS (2801))


読了。

薙里ちゃん、いますか〜。

端澄「ちーちゃんはおでかけだよ」

あ、端澄ちゃん。じゃあ、端澄ちゃんにお願いしましょうか。

端澄「えっとね、ありすちんがかーいいの。」
端澄「……」
端澄「……」
えっと、それだけ?
端澄「うん。」
ほかに何かない?
端澄「……言うとお兄ちゃんおこるし」
は?怒らないよ。
端澄「本当に?」
うん。
端澄「じゃあ、ゆうね。あーちゃんて、伽耶お姉ちゃんに似てる」
う……。
端澄「……つらそう。やっぱゆわんかったらよかった」
……そんなことないって。はははは。
端澄「笑いがかわいとるよぉ」

「……何をやってるんだか」
あ、悠伽さん
悠伽「姉さんまた御兄様をいじめてたんですか」
端澄(ぷるぷるぷる)「ちがうよ〜」

悠伽「で、今日はなんの紹介なんです」
えと、ぼく地球の続編。
悠伽「……あの微妙なハナシ?」
う、え〜と。
悠伽「じゃあ、とりあえず紹介していきますね。

 作者の日渡早紀さんは緻密な設定を元にハードな話を上品に語る独特のストーリーテリングで長年「花とゆめ」誌などで活躍を続けられた漫画家さんですね。
 「無限軌道」等の学園を舞台にした正統派の少女漫画も描きつつ、もう少しエキセントリックな作品も発表されていました。こちらのスタイルはアクマくんシリーズを経て「記憶鮮明」にてある意味完成されたと言えます。

 そして、その「記憶鮮明」の東京編として連載開始されたのが「ぼくの地球を守って」(通称「ぼく地球」)というわけです。今回の「ボクを包む月の光」は「ぼく地球 次世代編」とサブタイトルが付いてますので、正式には「記憶鮮明東京編次世代編」なわけですね。」

えと、悠伽さん?
「はい?」
「ぼく地球」が「記憶鮮明」東京編だというのは、既になかったことになってるんじゃないでしょうか。といいますか、ぼく地球読んでる人も誰もそんなこと意識してないと思うのですが……。
悠伽「……確かにその通りですね。「ぼく地球」は「記憶鮮明続編」の枠をあきらかに打ち破ったといえます。日渡先生の代表作として「ぼく地球」を挙げない人は皆無に近いのではないでしょうか。21巻という長編作でありながら、飽きさせず読めるストーリーはまさに逸品。前世と現世の人間関係の複雑な絡みを、「夢」を使いうまく情報統制しドラマの展開に繋げている。
 それだけでなく、登場人物もよく描けていましたね。亜梨子(ありす)の魅力もさることながら、輪、迅八の相手役二人もそれぞれ自分の考え方を持って行動していました。ある時は好感を覚え、ある時は嫌悪感を抱く。魅力的でしたね。それぞれが前世に縛られていながら、解放されている部分もあり、その辺の葛藤も自然に描かれていた。面白かったですね」

えと、他の登場人物も魅力的でしたよ。
悠伽「ああ、御兄様は秋海棠さんがお好きでしたよね。」
うん。
悠伽「究極のストーカーさん」
……(泣)
悠伽「何俯いてるんですか。別に漫画のキャラクターに感情移入することが悪いとはいいませんけどね。胸を張ればいいんですよ。他人にどう言われようとも。秋海棠さんは少なくとも自分を貫き通したという点は評価できると思います。だからこそ転生して、春彦という人間になれたんだと思いますよ。彼の木蓮への愛は、彼にとっては通常の恋愛よりも高次のものになったんでしょうね。」

……うん。、わかるよ。通常の恋愛よりも大事なもの、として彼はそれを捉えた。だから輪から亜梨子を奪おうとはしなかったし、むしろ輪を理解しようとしなかった亜梨子を怒鳴りつけさえもしたんだ。そして、おそらく彼が絵本作家や小説家になったのもおそらくその「大事なもの」を創作の中で表現しようとしたからだろうし、また、彼が独身で居続けるのも……。
悠伽「でも、木蓮にとって、また亜梨子にとっては、その「大事なもの」は無価値に近かったのですよね。」
……またばっさり斬ってくれますね。
悠伽「事実なんだからしょうがないでしょう」
まぁそうなんだけど。
悠伽「秋海棠も春彦も幸せだったんですよ。だからあえて「木蓮」を自分のものにしようとはしなかった。それは彼らにとって無意味なんですよ。」
うん。
悠伽「だから、恋愛という価値基準でいくと、秋と木蓮は最悪の相性なんでしょうね。」
そうだね。……面白いよね、水族館とかでさ、同じものを見てさ、同じように心惹かれてさ。価値観が似てるとこもあるんだよね、この二人。

悠伽「それと恋愛の相性とに相関関係は無いですから。それは言っても意味ないですよ……。
 ……えーともの凄く話が脱線しちゃいましたけど、その「ぼく地球」の続編がこの次世代編ですね。外伝を間に挟みましたけど、登場人物も同じだし世界観も同じ、正統なる続編と言っていいでしょう。」
うん。
悠伽「ただし、作風はかなり変わっています。普通の7歳の蓮を主人公に据えているので仕方はありませんが、甘甘ののほほんとしたストーリーです。今後に含みを持たせた伏線も張っていますが、このお気楽さに耐えられない読者もいるかもしれませんね。まぁ、最近の日渡さんの作品に一貫した共通点でもあるのですが」

……個人的に春彦が亜梨子のことをあーちゃんと呼ぶのが許せなかった。

悠伽「そんなとこで嫉妬してどうするんですか。じゃあ、あなたも伽耶姉様のことをかーちゃんとでも呼んだらいいじゃないですか。そういうウジウジしたところが御兄様の悪いところですよ。」

……。だって彼女は死……ごめん、わかってるんだよ。勿論、そんなことは。愚痴言わせてくれたっていいじゃん。だって。本当にあーちゃんは綺麗で、ほんのりと輝いていて、しかも僕と同い年で。本当にびっくりしたんだよ。

悠伽「まぁ、いいですけどね、それで幸せならね」

うん、幸せだと思うよ、僕は。