見事に敗北「神のみぞ知るセカイ」
- 作者: 若木民喜
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/10/16
- メディア: コミック
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先週ミクシィ日記の方でこんなことを書いたのですが、
今週(サンデー1号)では見事に桂馬は敗北。
やられたなぁ。
こんな最低限のフォローで理解出来る範囲に落ち着けられるものだと正直思わなかった。
一応、桂馬にとっては当初の計画通りであって、これもまた「現実のもたらしたバグ」であると位置づけることによって、ドラスティックな価値観の崩壊を避けているわけですね。
それによって、田舎行きエピソードに続き、ゆるやかに桂馬の変容を促している、という形を取っています。
まぁ、全面的に納得出来たわけではないのですが、よし、としましょう。
おかげで、再び天理にスポットが当てられたわけですから。
しかし、本当に天理かわいいな、こいつw。
異性として見るのではなく、感情移入の対象としてかなり理想に近いです。
桂馬は、一面的ではありますが、存在としての理想に近い面があって、天理は、その桂馬の全体をひっくるめて素朴に評価する目を持っているんですよね。
例え長い間会うことができなくても、常に相手のことを考えていたからこそ、辿り着けた領域なんだと思っています。
今週の、天理の自宅玄関先での桂馬との会話で、その天理の想いがあふれていて微笑ましいです。
桂馬「なぁ」
天理「え!?」
桂馬「人って面倒だな…… なんでこんな簡単にスキマが空くんだ…? 人生、良いことも悪いこともある。でも、みんな悪いことばかり数えてしまう…」
桂馬「なんでわざわざ…… 不幸せになりたがるのかな…」
天理(俯いて少し考え込んで)「逆だと思うよ…」
天理「みんな…追いかけてるんだよ… 幸せを……」
天理「もっと幸せになりたいから、今以上の自分になりたいから…そうじゃない時…がっかりするんだよ…」
天理「不幸せになりたいんじゃなくて…幸せになりたいから…悩んじゃうんだ…」
桂馬「……なんだかな…… 今の自分じゃ満足できないのか…?」
天理、頬を赤らめる。
天理「私は少し…榛原さんがうらやましいんだ……」
虚空を見つめる天理。
天理「私はずっと… 今以上なんて考えたことなかったから…」
玄関のドアを開け、その前で桂馬を振り返る天理
天理(笑顔を見せながら)「…… じゃ、また明日ね。」
天理を吸い込み閉じるドアを無言で見つめる桂馬。髪をいじり、何か考えごとをする様子。
と、こう抜き出すと、どれだけラブラブなんだよ、ごちそうさま、と言いたくなりそうですが、このシーン、実は桂馬は他の女の子、榛原七香の心のスキマを埋めるために、天理に協力を依頼しに来ているんですよね。
桂馬はその天才的洞察力で七香の心理は手に取るように把握している。そして彼女の心のスキマを埋める方法をも読み切っている。そしてそのために5日間徹夜するなど、全力を尽くしている。
にも関わらず、桂馬は天理の想いには全く気付いていない。
スイッチのオンオフみたいなもので、天理に関しては桂馬の超人的思考能力は全く発動されないのですよね。この辺の設定付けは本当にうまいよなぁ、と思います。
で、実は、この会話の間、ずっと二人は視線を合わせないのですよね。
厳密にいうと、最初の桂馬の「なぁ」のところで目を合わせて、その直後、「人って面倒だな……」のところで桂馬が目をそらしてから後は視線を合わせていないんですよ。
現時点で、二人の心と心は全く通じ合っていない。
でも、自分で自分に枷をはめている、という点でこの二人はよく似ているんですよね。
理論的に完璧な枷をはめた桂馬と理屈を超えた枷をはめた天理。
でも、二人はそれぞれが独自にその枷に対して疑問を持ち始めている。
二人もまた、希望を求める、「生」というあくなき戦いの舞台へと登ろうとしているのだろう。
そんな二人を僕は限りなく愛おしく思うのだ。