Landreaallの読みにくさについて

Landreaall 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

1〜13巻まで読了。
主観的評価 9 客観的評価 9

 Landreaallを最新の13巻まで先日読み終えた。海燕さんとのラジオに備えてのことでした。
 この作品が傑作であると、私も評価します。ただ、その肯定的評価は既に他の方が存分にしておられるので、そちらを参照していただくとして、
海燕さんの例
ペトロニウスさんの例
海燕さんの例2

私はちょっと違った角度から言及してみましょう。これが偏った意見であることは承知の上です。

 さて、私にとってのこの作品の第一印象は「読みづらい作品だなぁ」というものでした。
 それは何に起因するものかというと、あくまで個人的な見解になるのですが、



・絵柄が好みでなかった。


 私は、物体(特に人物)を面できっちりと捉えて造形するタイプの絵柄が好みです。しかし、初期のランドリオールは面の意識が薄かったと感じます。この点については最近は変化が見られ、きっちりと面を捉えた造形が出来ていると感じます。
 あと、瞳の描き方についても、初期はいまひとつ精気が感じられない印象があった。焦点があってないというか。それはDXのキャラには合ってるけど、イオンには合ってないと思った。



・キャラクター視点を確立することが困難だった。


 DX、イオンという物語の中核となるキャラクターが掴み所の無いまま物語が進んでしまった感がある。3巻まで読んでようやくDXを掴めた感があるが、イオンに対する過保護については、いまだに理屈がわからない。DXに友達がいなかったから、というのはイオンに依存する理由にはなるが、過保護にする必然性はない。
 イオンの側でも、既に独立して王(リーダー)になれるだけの才能を見せながら、余りに行動が幼すぎると感じた。13巻でようやくそれに気付くという描写があったが、イオンを視点の保有者として見る(イオンの成長物語としてみる)なら、余りに長過ぎる時間を掛けたのではないか。
 この二人を見た時に、互いに互いのキャラクターの魅力を阻害しているのではないか、と感じたのは事実。
 あれだけ一緒に居て、3巻のラスト近くでピント外れのことを言っていたイオン*1には読者として辛いものがあった。
 あの時もDXが全てを打ち明ける相手は六甲なんですよね。DXもイオンには理解してもらえない、と感じているし、話しても自分が辛いだけ、という。
 それを当たり前と感じ、それでもあえてイオンの精神的成長を願わないDXというのが理解しにくかった。
 まぁ、六甲がいるからイオンには望まない、ということかもしれない。今ではそう思うことが出来るようになったけど、初読ではそこまで至ることは出来なかった。
 私が感じるDXの天才性を際だたせていくためには、DXの言葉の意味を理解し、かつ、DXの進む方向性について直接利害関係を持たず、DXに対して根本的な干渉を行う意志のないキャラクターをそばにおくのが理想的だと思っています。イオンはちなみに全て当てはまらないです(苦笑)
 個人的にメイアンディアにその役割を期待しています。DXの妻候補かなぁ、と個人的に期待。



 ・状況描写の過不足


 漫画の状況描写というのは、より視覚的なものとより情報的ななものの二つにわけられると思うのですが、ランドリオールの状況描写は情報的なものに偏り過ぎている印象があるのですよね。
 前の1巻の感想にも書きましたが、アクションシーンになった際のキャラの動きが非常に分かりづらいんですよね。
 設定などが頭に入っていると脳内で補完できる面もあるんですけど、そうでない時は辛い。
 特に1巻で両親が竜と戦うシーンなんかに顕著なんですけど、竜がどんな動きをするか、というのは読者には全く予想がつかないわけじゃないですか。どんなブレスを吐くのか、噛みついてくるのか、爪でなぎ払うのか、どれだけ動きが素早いのか、わからない。
 なのに竜の動きが割とアバウトに描写されたりしていると、読んでいて困ってしまうのですよね。竜だけならまだいいのですけど、このシーンはおまけに歌とか宝珠とかの効果まで考えないといけないのですが、その辺がさらにアバウトだったりする。
 こういう傾向はその後も見られました。公主国で竜が出てきても突然状況がわかりにくくなったし、3巻でのDXらの竜退治も同様です。
 何度も見返せば、どうなったか推測はつくのですが、一読して理解できないのは辛いと感じました。
 12、13巻での「怪物のアカデミー襲撃」のエピソードにおいてもその傾向は見られます。アカデミーの全体の配置は簡易なマップが示されたので理解の助けになりましたが、女子寮内の構造はほとんど示されませんでしたので、どこを破られたらどのぐらいピンチになるのか、ということを客観的に判断するのは困難でした。
 ただ、この時点で前述の例と異なるのは、読者側に今まで蓄積された、各キャラの情報が存在することです。私は、彼らの反応を見ることにより、ティティが、あるいはフィルがこういう判断を下すなら、こういう状況なのだ、ということを間接的に知ることが可能なんですよね。その辺りのフォローが効くのは、この作品の懐の深さだと評価しています。
 さて過不足の不足の方について述べてきましたが、過の方についても少し。
 事件後に故郷へ帰っているDXらの元にアカデミーからの通知が来るのですが、そこに記されている内容が物凄く詳細に渡るものなんですよね。
 よく考えられてるのはわかるんだけど、何故、それをもう少し前に状況説明のために出して来なかったのかと思うのですよ。
 情報が無いゆえ生じる緊迫感という演出はありだと思うので、トレードオフになってしまうのでしょうけど、もう少し小出しにして、状況を把握しやすくしてもよかったのかな、と思います。
 例えば、浮遊鰐が視覚的にどんな存在であるのか、結局この回まで全く情報がなかったんですよね。
 その辺、小説に近い演出方法を取っているのかな、と思うのですけど、漫画を読んでいると考えた際にやはり違和感があります。



・伏線が遠い


 これもトレードオフの話になるのですけど、基本的にエピソードが独立していないんですよね。
 私は一回目、一旦7巻まで読んで、その後、時間を置いて8巻を読んだのですが、前巻までの前提を忘れていると、なかなか話に入っていけなかったです。で、一度読むのをやめてしまった経緯があります。
 以前わからなかった伏線が生きてくる。その快感はわかります。しかし、一読しただけでは非常にわかりにくいのも事実です。その辺で読者を選んでしまっているのではないかと思います。
 例えばCLANNADのゲーム版においての、ことみのシナリオを思い浮かべてもらえればいいと思うのです。このシナリオでは、ことみは最初から、朋也を幼馴染みだと理解していて、一生懸命アプローチを取ろうとします。しかし、言葉足らずのため、朋也にはそれが全く伝わりません。プレイヤーが最初に読む際には、彼女は電波系、あるいは天然系でわけのわからないことしか喋らないように見えます。
 全てを終えて、もう一度、頭から読み直してみると、驚愕するくらいにまっすぐな、ことみの想いが伝わってきます。
 しかし、このシナリオを再読するプレイヤーは何人いるでしょうか。
 Landreaallにそういう理解の敷居の高さの存在を感じるのは事実なんですよね。
 逆に言えば、読み返せば多くの気づきが得られるであろうことは言えます。

 以上を考えると、

Landreaallを読むのなら、再読、再々読は必須だろうと思います。


また、多くの人にとってそれだけの価値のある作品だと思っています。

*1:(マリオンの遺した)歌が聴こえるというDXに対し「これでよかったの?」と返したシーン